envyⅠ
「はい、これ、どうぞ」
扉をちょっと開けてその隙間からでタオルを掴んだ腕を突き出そうとした。
だけどタオルが大きすぎて、というより隙間が狭すぎてうまく渡せない。
もたもたしてるとはーい、って声と共に咲弥さんがひょこっと、上半身ごと扉から手を出した。
それに驚いてうわっ、と情けない声を出した私は顔をぐりんと反対方向に背けたけどばっちり見てしまった。
そんな私から咲弥さんはタオルを受け取って、 「ありがと。もうちょっとだけ待ってて」って呑気に扉を閉める。
びっくりした。 手首だけだと思ってただけにすごくびっくりした。
まさか上半身ごと出してくるとは思わなかった。しかもあんなに堂々と。微塵も恥じらいを見せずに。
…まぁ、あれだけ均整のとれた綺麗な体してたら、誰だって恥じらいなんて持たないかもしれない。
むしろ見てくれって思うのかもしれない。
咲弥さんは全体的に白くて、モヤシじゃないけどスラッとしててすごく綺麗だった。
まるで、一つの芸術品みたいに。
…ほんの一瞬しか見てないくせにばっちり記憶してる私は変態かもしれない。