envyⅠ
それからしばらくして、バスローブを羽織った咲弥さんが出てきた。
咲弥さんの気配を感じながらも、私はそっちを見ることが出来なかった。
「あ、もう届いたんだ」なんて 言いながらこっちに歩いて来るのがわかる。
咲弥さんは机の上のモノポリーを持つと、私が座っているベッドに近づいてきてその上にモノポリーをパフッと音をたてて投げるように落とし、シーツの上に腰かけた。
「待たせてごめんね」と、咲弥さんが箱のセロハンを剥がし始めても、私はまだ顔を上げられなかった。
「そ、そう言えば、咲弥さんは普段どういう仕事をしてるんですか?」
俯いたまま恥ずかしさから紡いだ言葉は、待っている間疑問に思ったこと。
「んー、いろいろかなぁ」返って来た答えはひどく曖昧なもの。
それじゃ答えになってない、と咲弥さんを見ると咲弥さんは自分の駒を選んでた。
もう他の準備はできたらしい。
勝手に照れて、咲弥さん一人に作業させてしまったことを申し訳なく思う。