envyⅠ
次々と打ち上げられた花火で煩かった空は静かになり、あっという間に休憩時間に突入した。
「なぁ、留美元気にしとる?」
また始まらないかな、なんて思っているといきなり話しかけられた。前に座ってる運転手に。
「……え?」
「留美、妹やろ?」
留美を知っているような口振り。
「え、留美…留美は、元気ですよ。 あの、留美とはどういう…?」
ミラー越しに顔をじっと見ると目があった。
「あ、俺?元彼やよ。留美の。
あんたたしか留美のねーちゃんやろ。俺のこと覚えてへん?」
彼はそう、聞き慣れない関西弁で話す。
「すみません、覚えてないです」
面識があるらしい。だけど覚えてない。 というより、留美の元彼なんていちいち覚えてたらきりがない。
妹の元彼なんだと知って、物凄くこの空間が居心地の悪いものになった。
こういう時ってあんまりいい思い出がない。
「ふーん、まぁええわ。 てか、あんたら相変わらず全然似てへんな」
そんな私をじろじろ見て、それが可哀想だとでも言うように言う。
「……………」
なんて返していいのかわからない。 何でこんな風に言われなきゃなんないのかもわからない。
可愛い妹と違って姉のお前は可愛いくないなって?なんかもう、失礼すぎる。
むっとしたまま何も言わない私を見て、ニヤっと口角を上げた。
「思ってたんやけど、あんた今でも留美嫌いやろ」
それは、さも楽しそうに。
「え?……嫌いじゃないですよ」
ほんとになんでこんなこと言われなきゃならないのかわからない。
今でもって、昔からずっとそう思ってたの?
留美と付き合ってる時から、面識もさしてないのにこいつは妹を妬んでるって??
可愛い妹を妬んで嫌ってる姉に違いないって?
ろくに話したことも無いくせに、そんな風に思われてた事がショックだった。
「へぇ?じゃあ好きなんや?」
聞いてるくせに、私の答えを知ってるかのような、決めつけてるようなその態度にイライラする。
こんな嫌みな人ってなかなかいないと思う。
「はい。当たり前じゃないですか。」
私の妹ですよ、と。