envyⅠ



ちょっとした、優越感。 でもね、留美。
私はもっと、羨ましい、って思ってきたんだよ。 それこそ、『羨ましい』って表現じゃおさまらない程に。
だから、ちょっと気分か良かった。

……私は性格が悪いのかもしれない。


ちなみに、留美の元彼に会った話はしなかった。 びっくりした出来事ではあるけど、別に珍しいことじゃない。
留美の唇が咲弥さん、と動く度、私の視界の端に映る信吾さんの苛つきが増す。
“つまんねぇ土産話を留美にすんな” “留美も、他のやつの名前呼ぶな” って。



……ほら、留美は相変わらず、こんなにも愛されてる。


でも、今日はそんなことあんまり気にならない。
1日でいろいろ起こり過ぎて、頭がついていかないからだと思う。

整理できてなくて、混乱しててよく分からない。



今だって、留美に羨ましがられてちょっと嬉しいのに、優さんの態度が気になる。


さっきの私を睨んだ目が頭から離れない。
そんなことを考えつつ、留美と話してると 「そろそろ花火の休憩終わるんじゃねーか?」 と、腕時計を確認しながら爽馬さんが言うので、私たちは移動することになった。


……今の場所では花火鑑賞どころか、周りの目の方が気になる。

着いたのは小さな丘のような場所だった。 周りを見るとまばらに人はいるものの、さっき程じゃない。
もう真っ暗で顔なんて分からないはずなのに、それでもやっぱりこの集団は注目されてて。

やっぱり、オーラが違うんだって思った。


来た順に左から、爽馬さん、ゆいとくん、信吾さん、留美、優さん、私で草の上に座った。
座るとき、汚してしまうかも、と抵抗があったけど結局座ってしまった。


程なくして夜空に打ち上げられた花火。
ただやっぱり私は、左隣が気になって、それをちゃんと見れなかった。



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