桜ノ籠 -サクラノカゴ-
梅雨に入り、雨続きだった。
でも今日の土曜日、みんながお休みの日に久しぶりの晴れ空になり、私の引っ越しをしようという事になった。
「ちょうど、青磁の部屋が一つ空いててよかったわ~」
桜模様のカーテンを取り付けながら、茜さんが話す。
茜さんの言葉に、青磁先生は小さく溜め息をついた。
「ごめんなさい。この部屋、青磁先生の仕事部屋だったのに…」
この部屋にあった荷物は、青磁先生の寝室に追いやられた事を、私は茜さんから聞いていた。
「あ、いや…仕事部屋っていっても、机とノートパソコンとちょっとした荷物しかなかったから、大丈夫だよ」
「でもー」
「大丈夫、大丈夫。
青磁の寝室はこの部屋より広いし、どーせ寝に帰って来るだけなんだから」
よし、出来た。と、茜さんは窓に掛けたカーテンを、私に見せてくれた。
桜模様のカーテンが、風になびく。
それだけで、部屋の雰囲気が変わった様に感じる。