桜ノ籠 -サクラノカゴ-
♢
マンションに帰ると、あの女の人が出迎えた。
雨に濡れた私と青磁先生を見ると、慣れた手つきで、タオルを洗面所から持ってきた。
「こんなに濡れて……。大丈夫?お風呂の準備しましょうか?」
心配そうに彼女は私に話しかけるけど、私は首を横に振る事しか出来なかった。
慣れた手つきでタオルを準備して、
自分の家のように振る舞う彼女。
そんな事ばかり気になって、
でも、そんな事ばかり気にする自分が、イヤで……
座ったソファから動く事も出来ず、
何をどう話したらいいかも分からなかった。