桜ノ籠 -サクラノカゴ-
確か、この人は茜さんの弟…。名は、
「…青、磁…先生…」
そう、カズ兄が話してくれた。私に話しを…。
ドクンドクン
と、また鼓動が響く、息が苦しくー
「覚えててくれたんだ、俺のこと」
私を覗き込む様に、青磁先生は微笑む。
優しい口調、柔らかな声で、嬉しそうにー
何がそんなに嬉しいのか、
私は何も喜ばせられることを言った気もなかったのだけれど、
とくん、とくん…
それだけで、私の鼓動は落ち着きを取り戻していた。
よく分からない…。
でも、青磁先生と呼んだら微笑んでくれて、
嬉しそうで、
何だか私をあたたかくしてくれて…。
それは、何と呼んだらいいか、分からない心。
それとも、忘れてしまった心?