桜ノ籠 -サクラノカゴ-
誰かに似ている、と思った。
すぐに気付く、
それは、写真でしか見た事のない、父親なのだとー
「伽羅?」
その人が立ち尽くす私の顔を覗き込み、私は驚く。
「はっ、はい!」
思わず、大きな声で返事をしてしまった。
「すげー声、耳に響くって、」
あははっ、と大きく笑いながら、その人は指で耳に栓をする。
そ、そんなに、笑わなくたって…
と、思っていると、
「オレは和季(かずき)。一宮和季(いちみやかずき)。
名字違うけど、兄妹だから。
これからよろしくな、水無月伽羅(みなづききゃら)」
と、イタズラっぽい笑顔を私に向けた。