桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「和希っ、やっと見つけた。鞄だけ放り投げて急にいなくなるんだから…。バイト遅れるよ、早く帰ろう!」
瑛李香のキツイ声。
「ワリィ、ちょっと青磁先生に用があってさ」
オレの分の鞄を抱えた瑛李香の頭にポンポンと手をのせた。
「瑛李香はピアノだろ?」
「うん、5時から」
「待っててくれてありがとな」
「あれ?どしたの…和希が優しい…」
オレはいつも優しいだろ、って言いかけて、思い出す。
最近のオレの事…
「…悪かった。最近優しくなかったよな。ーでも!これからは、今まで以上に優しくするからな、瑛李香」
そう言って、オレは瑛李香を抱きしめた。