桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「ちょっ、ここ学校!」
オレの腕の中で、瑛李香が暴れる。
「じゃあ、学校じゃなきゃいいわけだ」
含みをもたせて、オレは瑛李香の顔を覗き込む。
「な、何言ってるの!和希はバイト!」
名残惜しいが、離してやるか。
もーっ、と瑛李香は髪や制服を整える。
「…でも、安心した。和希、何か…嬉しそう」
瑛李香がオレを見て、微笑む。
「そ、か?…やっぱあれかな、可愛い妹に癒されたかな、」
「妹!?和希、お父さんの再婚で妹できたの?」
「ん?いや、親父の再婚で出来たのは、弟。しかも生まれたばっかの、」
ーーあぁ、そうか…
「瑛李香にちゃんと話してなかったな。オレ今、実の母親と妹と暮らし始めたんだ」