桜ノ籠 -サクラノカゴ-
伽羅は、突然名を呼ばれ、ビクッとなったが、
オレの姿を見つけると、安心した様に微笑んだ。
「カズ兄っ」
「伽羅、お前何でこんな時間にこんなトコいんだよ?」
「塾がこの近くなの。カズ兄こそその格好……」
伽羅は白いシャツに黒のギャルソン姿のオレを、
さらに驚いたように、じーっと見る。
「バイトだよ。この店で放課後働いてんだ。っつうか、こんな暗い時間にうろつくな、お前は~」
オレは伽羅の頭をグシャグシャと乱暴に撫でた。
「だ、大丈夫だよ。人通り多いとこ通って帰るし、暗い所はダッシュで行くからー」
「ダメだ。一人で帰るな。オレ8時までだから、店の中で待ってろ」
「で、でも…」
「でも、じゃない!塾のある日はいつだ?」
「…火・木・土。土曜だけ昼間だけど、後は夜7時まで」
「じゃあ、また新しいルールだ。」
オレは、伽羅の前に人差し指を立てた。