桜ノ籠 -サクラノカゴ-
オレは思い出しただけで、笑顔が零れたんだけど、
伽羅は立ち止まって俯き、泣きそうだった。
「お、おい!?伽羅?」
オレは慌てて、伽羅の顔を覗き込んだ。
「…これからは、お母さんと私とで、美味しいご飯いっぱい作るから!」
伽羅は目に涙を溜めて、顔を上げた。
「伽羅…」
「あ!でも、お母さんと私と、ご飯当番制で…、私が当番の時はガッカリかも…」
ごめん…、と伽羅は小さく呟く。
漆黒の眼が涙で濡れ、笑顔を作ろうと頑張るが、うまくいかない伽羅。
気付いた時には、
オレは伽羅の腕を引き寄せ、
抱きしめていた。
「か、カズ兄…!?」
オレの腕の中でもがく、伽羅。
なんだ?
この感情はー