桜ノ籠 -サクラノカゴ-
ーー2years agoーー
♦
「カズ兄の制服、煙草くさい!」
私は、ソファに放り投げてあったカズ兄の制服の上着を片付けようと手に取り、
その匂いに、驚いた。
「ん?煙草?」
バイトから帰宅し、キッチンで麦茶を飲んでいたカズ兄は、私の方を振り返る。
「カズ兄!煙草吸ってんの!?ダメだよ!体壊すし、お母さん心配する!」
ズイッと、カズ兄の前に制服の上着を差し出し、私は怒り口調でカズ兄を見上げた。
「落ち着け、伽羅。オレは煙草吸ってねぇよ」
「じゃあ、この匂いはなに!?」
カズ兄は、鼻だけを私の持つ上着に近づけ、
あぁー、
と、呟いた。
「これは青磁先生の煙草の匂いだ」