桜ノ籠 -サクラノカゴ-

ーー2years agoーー

 side 和季


 ♦

「なんだ一宮、また来たのか、」


青磁先生は読んでいた本から顔を上げ、化学準備室のドアを開けたオレに目線を
移した。


「なんだよ、その言い方~。オレ邪魔?」

化学準備室のドアを閉め、オレはズンズン青磁先生のもとへ歩いて行く。



「お前がいたら、煙草が吸えないだろ」

青磁先生は、吸っていた煙草を銀色の灰皿で揉み消した。


「吸っていーよ、オレ気にしないし」
「俺は気になる」
「別に青磁先生の影響で煙草に手出したりしないし。オレ煙草はハタチからって決めてるから」
「ほー、いい心掛けだ。ま、吸わないのが体には一番いいんだけどな」

「青磁先生はなんで吸うの?やっぱ落ち着くわけ?」

「んー?俺のはもう癖みたいなもんだな」


そう言って、青磁先生は机の上に置いてあった三日月模様の煙草の紙箱を、胸ポケットにしまった。




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