桜ノ籠 -サクラノカゴ-

「部屋で休もう。伽羅ちゃん」

優しい、青磁先生の声。
それだけで、少し心がラクになる


私をベッドに寝かせてくれると、
ゆっくり休んで、と青磁先生は私の頭を優しく撫でてくれた。

スッと、私から離れようとした青磁先生のシャツの裾を、
私は掴んだ。

「伽羅ちゃん?」

驚いたように、振り返る青磁先生。


「……いかないで。傍にいてください」

震える声で私が言うと、
青磁先生は一瞬驚いたような表情になったけど、
次の瞬間、
優しく微笑む。


「俺でよければ」

そう言って、私の机の椅子をベッドの側に持って来ると、座って、


「他には?…何かして欲しい事はある?」

青磁先生の穏やかな声。


青磁先生は優しくて、
どこまでも、優しくてーー…
だから、

「手を…手を握っていて下さい」


離れないで、と
わがままを言ってしまう。


「あぁ…、傍にいるよ」

ギュッ、と
握り締めてくれた青磁先生の掌は、大きくて力強く感じた。


< 250 / 467 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop