桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「部屋で休もう。伽羅ちゃん」
優しい、青磁先生の声。
それだけで、少し心がラクになる
私をベッドに寝かせてくれると、
ゆっくり休んで、と青磁先生は私の頭を優しく撫でてくれた。
スッと、私から離れようとした青磁先生のシャツの裾を、
私は掴んだ。
「伽羅ちゃん?」
驚いたように、振り返る青磁先生。
「……いかないで。傍にいてください」
震える声で私が言うと、
青磁先生は一瞬驚いたような表情になったけど、
次の瞬間、
優しく微笑む。
「俺でよければ」
そう言って、私の机の椅子をベッドの側に持って来ると、座って、
「他には?…何かして欲しい事はある?」
青磁先生の穏やかな声。
青磁先生は優しくて、
どこまでも、優しくてーー…
だから、
「手を…手を握っていて下さい」
離れないで、と
わがままを言ってしまう。
「あぁ…、傍にいるよ」
ギュッ、と
握り締めてくれた青磁先生の掌は、大きくて力強く感じた。