桜ノ籠 -サクラノカゴ-

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いつの間にか、伽羅の手を握り締めたまま、青磁もウトウトしていたらしい。


青磁は、微かに聞こえた自分の携帯の着信音で、目が覚めた。
ブラックジーンズのポケットに入れておいた携帯を、片手で取り出す。

ディスプレイには、『茜姉』の文字。

出ると、茜は前置きも何もなく、

「着いたわ。開けて」

短く言うと、茜はすぐに通話を切った。

青磁は、それだけで状況が飲み込め、眠っている伽羅を起こさないように、
掌を静かにゆっくり離す。
伽羅が変わらず、寝ている事に安心すると、青磁は玄関に向かい、黒い扉を開けた。


そこには、
朝日の中コンビニの袋を下げた、茜の姿があった。


「どう?伽羅ちゃんの様子は?」

茜は、玄関で紫色のピンヒールを脱ぐと、コンビニの袋を青磁に渡し、自分の家のように、リビングに進んで行った。


「今は寝てる。……でも、不安定だ」

青磁は茜から受け取ったコンビニの袋を持って、キッチンに向う。
茜に頼んだ、伽羅がよく食べる碧い容器のヨーグルトや牛乳、シュークリームを冷蔵庫にしまった。


茜は青磁の表情を見て、溜め息を零す。

「あんた、またちゃんと寝てないでしょ?しばらく伽羅ちゃんは私が見てるから、寝なさい」
「そうもいかないよ。準備して、学校行かないと…。俺が出てる間、頼むな、伽羅ちゃんのこと」


そう言って、青磁は自分の部屋で鈍色のスーツに着替え、
藍色のネクタイをグレイ色のシャツの襟元に下げ、リビングに戻って来た。



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