桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「行ってくる。すぐ戻るよ、伽羅のもとへ」
私を安心させるように、優しく言うカズ兄の声。
その言葉と
そのぬくもりを残して、
カズ兄が離れる。
「カズ兄…」
言いたいことが、
伝えたいことが、
あるの。
たくさん、
たくさんあるのに、
言葉にならない。
「すぐ帰ってくる。だから、待っててくれな?」
「うん、うん…」
カズ兄の言葉に、私は泣きながらうなずくしか出来なかった。
「帰ってきたら、伽羅に伝えたいことがある」
「私も、私もあるよ…。あるよ、カズ兄…」
私の言葉に、優しい微笑みで応えるカズ兄。
優しく、
優しく、微笑んで、
バタン、
と、音をたて、
カズ兄は
扉の向こうに、消えた。