桜ノ籠 -サクラノカゴ-


「カズ兄が!カズ兄がー」

茜さんの腕の中で暴れ、名を呼び続ける。


愛しい、その名をー。



「和季君は…、和季君はもういないのよ!いないのよ、伽羅ちゃん!」

切なく叫ぶ茜さんの声。


聴こえ、



ガクン、
と、私はその場に崩れ落ちた。



いない…


そうだ。

もう、カズ兄は、



いないんだ……。




あの秋の日に、
あの秋の嵐の夜に、



あの紅い葉が舞う中で、


カズ兄はいなくなったんだ……。




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