桜ノ籠 -サクラノカゴ-

 ーーNowーー

 ♢


「…い、や…いやぁー!カズ兄ーー!」

思い出し、私は泣き崩れた。



強く吹き荒れる風、

舞い散る紅い葉、



紅く染まった、カズ兄の姿……



「いやだ!カズ兄!カズ兄ーー」

「伽羅ちゃん!しっかりしてっ、伽羅ちゃん!」

私の体を揺さぶり、
茜さんが私の名を呼ぶ。


「伽羅ちゃん、伽羅ちゃん!思い出の闇に、また引き込まれちゃダメ!青磁が…青磁が悲しむわ」


「せ、青磁…先生?」


その名が、
私を、引き戻す。



その名が、
私を優しく包み込む。




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