桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「青磁…」

ホッとしたような、茜さんの声がした。

その名に、顔を上げると、
そこには心配そうな青磁先生が私を見下ろしていた。


私は、
倒れそうな所を青磁先生に抱きとめられたのだと、気付いた。


あたたかな青磁先生の腕が、私を包み込む。

馴染みのある煙草の匂いが、私を包み込む。



青磁先生は、ここにいる。


ここに、

私のすぐそばにいる。



ホッとして、
張りつめていた気がゆるんだ。


ホッとして、
不安な心から涙があふれた。



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