桜ノ籠 -サクラノカゴ-
♦
伽羅がベッドで寝静まると、
青磁は握っていた伽羅の掌を離し、部屋を出た。
リビングに行くと、茜が牡丹色の薄手のコートを羽織っているところだった。
「帰り、遅くなって悪かったな。茜姉」
「私は大丈夫よ。その言葉、伽羅ちゃんにいいなさい」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、青磁はグラスに注ぐと、一気に飲み干した。
「そうだな」
青磁は新たにグラスに水を注ぐと、それを持ち、黒いソファに腰掛けた。
「遅くなったから気をつけて帰れよ、茜姉」
牡丹色の、綺麗なコートをまとう茜に青磁が言うと、
「帰らないわよ、コンビニ行ってくる。今日はここに泊まるわ」
サラリと茜が言う。
「え?」
予想もしない答えに、青磁は茜を驚いたように見上げた。