桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「今日だけじゃなく、しばらく泊まるわ。あんたが秋休みに入るまで、あと3日あるでしょ。
私が伽羅ちゃん見てるから、あんたはちゃんと学校行くのよ?」


「いや、俺明日から休むから…」

青磁は首元の藍色のネクタイを指で緩めると、溜め息のような声で答えた。


「ダメよ、あんたは学校行きなさい。先生でしょ」

「でも、伽羅ちゃんのそばを離れるわけにはいかない」


いかないで、
と、

離れていかないでと、
伽羅は何度も、何度も、寝言のように言っていた。


その言葉が、青磁を捕らえていた。




「伽羅ちゃんのそばを離れられない」

もう一度、
しっかりとした口調で青磁が告げると、


ペシン!

茜が、青磁の頭を掌で叩く音が響いた。

「ってッ」

思わぬ攻撃に、青磁の声が零れる。




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