桜ノ籠 -サクラノカゴ-

「あんたね、伽羅ちゃんと二人で倒れるつもり!?」

鋭い茜の声が飛ぶ。


「大丈夫だよ、俺は倒れない」
「そんな寝不足のフラフラで、なに言ってるのよ!」
「時間見て寝るよ、ちゃんと」

「そんなんじゃ、伽羅ちゃんを助けるどころか、あんたが倒れる、絶対!」
「でも!今俺が伽羅ちゃんのそばを離れるわけにはいかない!」


青磁の口調が、めずらしく荒くなる。


いかないで、と


「…行かないでと、伽羅ちゃんがいうんだ。俺に出来るのは、離れないことくらいだ…」


悔しそうに前髪をかきあげ、青磁は唇を噛み締めた。


「俺に出来るのは、もう…これくらいしかないんだよ…」



茜は、そんな青磁の頭をくしゃくしゃ、と撫でた。

「…あんたが、伽羅ちゃんを桜のもとから目覚めさせ、起き上がらせたんでしょ?
また、あんたが起こしてあげなさい」

「ンなこといったって…」

青磁は小さく呟き、考える。



もう、
わからない……。


どうやって、伽羅を桜の下から起こしたのか、
どうやって、伽羅を桜の下から目覚めさせたのか、



伽羅を愛おしく想ってしまった今の感情じゃ、



もう



わからなかった。



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