桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「おはよう、伽羅ちゃん」
居間へ向かう途中、声をかけられ、振り返ると、
そこには、白いシャツに黒のスカート姿の茜さんがいた。
「おはよう、ございます…。茜さん…おでかけですか?」
いつもと違う様子に、私は、あれ?と思う。
「そ、これから仕事。朝ご飯とお昼ご飯は、お母さんと食べてね」
「…ご飯?…青磁先生、家に…いないんですか?」
「ん、学校。今日始業式だからね。
…伽羅ちゃんも、
学校……行ってみる?」
学校…始業式…、
そうか、もうそんな時期なんだ。
私は、秋の終わりからずっと学校を休んでいた。
最後に制服を着たのは、いつだったかな、と考えて、
ハッとした。
最後に着たのは、カズ兄を見送った時ー
学校ではなく、
たくさんの喪服の中で着たのだと思い出す。