桜ノ籠 -サクラノカゴ-

「…大丈夫です。茜さんのせいじゃないから…。おかげで、私、目が覚めました」



ひらり、

ひらりと、

窓の外を、紅い葉が舞い散る。


見えても、
思い出しても、


前を向こうと、そう、思った。



『早く帰るから…、待ってて、伽羅ちゃん』

優しい声が、
耳元で、囁く。


でも、


「早く、じゃなくていいです」

『え?』

私の答えに戸惑う青磁先生。


「早くじゃなくても、私は大丈夫です」


ずっと、

ずっと、
言いたかった、言葉。


「私は、ここでちゃんと待ってますから。だからー、」


ひらり、

舞う、紅い葉。


「気をつけて、帰ってきて下さい。…私、待ってますから」


ずっと、
言いたかった。


言えばよかったと、


何度も
何度も

後悔した、言葉。



待ってるから

ずっと、
ずっと、


待ってるから、気をつけて、とーー。



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