桜ノ籠 -サクラノカゴ-
一人じゃない。
そう思えるだけで、こんなにも
心があたたかくなれるのだろうかーー……
「…離さないで、離さないで下さいね…」
青磁先生の胸に顔をうずめると、
鼓動が伝わり、
重なる。
「あぁ。やっとつかまえたんだ。簡単には離せないな」
やっと…?
不思議に思い、青磁先生を見る。
「あの桜で伽羅ちゃんを見た時から、俺は心奪われていたんだろうな。
ずっと、ずっと君に触れたくて仕方がなかった」
え…?
「…だ、って…青磁先生はいつも私のこと、…カズ兄の妹としてしか、見てなかったでしょう?」
「伽羅ちゃんは、俺の事、〝青磁先生〟としか見てなかったろ?」
だって、
青磁先生は、青磁先生で……
カズ兄の先生で、
私を助けてくれた先生で…
でも、
違った。