桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「花」

「えっ?」

突然の青磁先生の言葉に、驚いて顔をあげると、


「花、持っていこうか?…一宮に」

赤信号で車が止まると同時に、青磁先生はそう言って、私に微笑んだ。
いつもの優しい、笑顔で。

その表情に安心する。


何度、
何度その優しい笑顔に救われたのかな?


「はい」

私は迷うことなく答え、
さっきまでの疑問は、しばらくしまっておくことにした。


『そ。そのうち、自然と聞きたくなったり、聞けるようになるから』

『なる……かな?』
『なる!絶対っ』



そうだね。
そうだよね、咲耶ちゃん。


今日はカズ兄に会いに行くと決めた。
だから、今はそのことだけ考えよう。

聞きたくても聞けないことばかり考えていてもしかたがない。



うん、
今は、そう思えるよ。

咲耶ちゃん。



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