桜ノ籠 -サクラノカゴ-
〝お供え用〟のその一角から、動けなかった。


「伽羅ちゃん?」

動かない私に気付いた青磁先生が、
私に近づき、

私の視線の先にあるその花の前で、
同じように、
視線も、動きも、
止まった。


「……伽羅ちゃんの好きな花でも、一宮の好きな花でも、何でも…いいんだよ」

視線は私と同じまま、
その白い菊の花を見ながら、青磁先生が話す。


うん、
そうだよね。

私が好きな花でも、
カズ兄が好きな花でも、

なんでもいいよね。


でも、
離れないの。


この白い花じゃなく、
別の花を選ぶことが、


どうしてか、
できないよ。

青磁先生。

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