桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「伽羅ちゃんは13年、兄を知らずに生きてきた。
思い出の中に兄の存在はなかったのよ。
それが突然、和希君が現れた。
いきなり現れた男を兄として見る事なんて…。
実の兄妹とはいえ、好きになってしまっても不思議はないんじゃないかしら……」
「女のカン、てやつ?」
「そんな感じかな。青磁は違うと思う?」
「……どうかな、
伽羅ちゃんが一宮を強く想っている気は、するけど」
「恋愛感情かどうか…、本人でもその境界線は難しいかもね」
そう呟いて、茜は静かな三日月を見上げる。
青磁のくゆる煙草の煙が
夜空に
舞い上がって行った。