桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「またね、和季」
カズ兄に声をかけた後に瑛李香さんは私の隣りを過ぎる、
その時、
「ありがとう……今日、あなたに会えてよかった」
そう、優しく囁いた。
その言葉を受けて驚いて振り返った時には、
もう、
瑛李香さんの姿は白い雪の向こう、
遠くに後ろ姿が見えるだけ。
「……私、私も、瑛李香さんに今日会えて、よかった」
その凛とした背を見送り、
カズ兄の方を向くと、
そこには、
真っすぐに空を仰ぐ、
黄色の小菊が添えられていた。