桜ノ籠 -サクラノカゴ-
冬ノ第二章
紫陽花に降る氷雨
♢
帰り道、
水色の青磁先生の車に乗って、
窓の外の次々と変わる景色を眺めた。
カズ兄に手を合わせてから、
ずっと、
青磁先生と会話らしい会話はない。
でも、
行きの雰囲気と違って、
気まずさとか、
沈黙の焦りは感じない。
どうしてかな?
ぼんやり、
そんな事を考えていると、
「伽羅ちゃん」
青磁先生に名を呼ばれ、
運転席の方に視線を上げた。
なんだか、
いつもと違う呼び方の様な気がして、
少し心がザワついた。