桜ノ籠 -サクラノカゴ-

「ごめん、少し待ってて」


そう言って、
青磁先生はエンジンを切ると、

車を降りた。




いつものような微笑みは、
ない。




いつものように、
私の方を振り返らない。





青磁先生は、
歩道が青信号に変わると、

向こうの道に渡り、


その
〝沙智さん〟のいる店内へと、消えた。




青磁先生の後ろ姿から目が離せない。


軋む鼓動が、
体中に響く様な、


そんな気がした。





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