桜ノ籠 -サクラノカゴ-
雪の夜空に咲く
♢
「もう、こんな時間か」
青磁先生は、ダイニングテーブルに広げていたノートパソコンから顔を上げ、
くわえていた煙草を灰皿に置くと、
リビングでテレビを観ていた私の方にやってきて、
髪をくしゃ、と撫でた。
「もう寝た方がいい、伽羅。明日は伽代さんを空港で出迎えるのだから」
そう、明日は冬休みをとれたお母さんが帰ってくる。
一週間だけの滞在だけど、夏以来、久しぶりにお母さんに会える。
でも、
「少し…寂しいな…。お母さんが帰ってきたら、一週間は青磁先生のお家に帰って来れないから…」
お母さんの帰国中は、青磁先生の実家である藤川家にお母さんと私、お世話になる事になっていた。
だから、
こうして、青磁先生と過ごすのは一週間後になる。