桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「あれ?どうした、伽羅」
そう言う青磁先生の手には、
缶ビール。
見ると、
テーブルには幾つかの缶が転がっていた。
きっと、全部カラだと思う…。
「青磁先生こそ、こんな遅くに…」
テレビを観るわけでも、
パソコンをしてるわけでもなく、
ただ、
お酒を飲んでいた。
「めずらしいですね。青磁先生がお酒飲むなんて」
煙草を吸うのは知っていたけど、
お酒を飲んでいるところははじめてみたかも。
「ん?そうかな?最近飲んでるよ」
「……テレビとか、観ないんですか?」
「いーんだ。これは邪念を祓うためだから」
「へ?邪、念?」
「そ、邪な」
そう言って、
青磁先生は笑った。
「よこ、しま?」
訳が分からず問うけど、
「いーんだよ、伽羅はわからなくて」
そういって、また缶ビールを口にして、
私から目をそらす。