桜ノ籠 -サクラノカゴ-


「……青…」

「でも、まだ抱かない」


かすれる私の声を遮る、
青磁先生のしっかりとした声が、響く。



ーーえ?


恥ずかしくて、
どうしたら良いのかわからなかったけど、

青磁先生のそのきっぱりとした声に顔を上げ、
見上げると、



「今、伽羅を抱けたら幸せだけど、まだ抱かない」

「どう、して……青磁先、」


そこまで言葉にして、気付く。




「〝先生〟だから、ですか?」



その問いに、
〝青磁先生〟は、


哀しそうに、

寂しそうに、



でも、

迷いのない眼で真っすぐ私を見て、


「いつか覚悟ができたら、な」

そう、
小さく囁いた。


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