桜ノ籠 -サクラノカゴ-

その低く艶めいた声に、一気に顔が熱くなる。


せ、青磁、
青磁って!
そんな急に……



「せ…青磁、さん……」


はじめて呼ぶ名、
緊張で私の声が震える。


「えー?〝さん〟?」

わずかに唇をずらし、
不満そうな低い声が答える。


「う、ん…。ダメ?〝青磁さん〟」

青磁先、じゃなくて、
青磁さんの眼を見上げると、



「やばい。すごい、嬉しい…」


今度は照れたような低い声。

青磁さんは缶ビールをテーブルに置き、
煙草を灰皿で揉み消すと、

私の頬に両掌で優しく触れる。




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