桜ノ籠 -サクラノカゴ-

「次の休みに、桜を見に行こうか」


私の髪に軽いキスをして、
青磁さんが囁く。

「じゃあ、藤川家に行きましょう?きっと綺麗ですよ」

「え、あそこは……」

少し、
青磁さんの表情が、曇る。


もしかして、私を心配している?


苦しい時に眺めていた桜、だからーー



「……大丈夫ですよ。あの桜が一番好きなんです。
だって、青磁さんと出逢った桜、ですから」



そう、

苦しい事、
つらい事が多かったけど、


でも、
あの桜は青磁さんと出逢った場所でも、あるから。



「ね、一緒に行きましょう?」



また二人で、


一緒にーー。




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