桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「あっ、う…何でもないわよっ、ちょっと買い物往って来る。
薄情教師分の夕飯、用意しなきゃ」
「薄情教師っていうな。これでも生徒の信頼は厚いぞ」
「自分でいう辺りあやしいわね。
じゃあ、いってくる。
……いい?青磁、伽羅ちゃんに手出すんじゃないわよ」
「いらぬ心配だ。早く往け」
パコーン、という音が響き、静かになった。
変わらず、舞い散る花片を眺め、ぼんやりさっきの男の人を憶い出した。
ただ憶い出す、それだけ。