桜ノ籠 -サクラノカゴ-
皐月晴れ
「い、いってきますっ」
そう言った、自分の声が緊張しているのが分かる。
「いってらっしゃい、伽羅ちゃん」
片手を挙げ、綺麗な笑顔を向けてくれる茜さん。
「気をつけて行くのよ。ここからは初めて行くから…」
心配そうな、おばさん。
「…大丈夫です。私には、咲耶ちゃんがいてくれますから」
迎えに来てくれて、隣にいてくれる咲耶ちゃんに笑顔を向け、私は答える。
それに、
制服のポケットに入れた、お守りに、
触れる。
青磁先生がくれた、桜の葉にー。
先に青磁先生は出かけてしまったけど、
大丈夫。
近くに、青磁先生の想いを、感じるから……