冬の日の犬のお話
『何かしてやれること、ないんですか?』


『何もない。役所に電話して引き取らせる。他人の犬だから、楽に眠らせてやることもできない。』


ポタン…


獣医の言葉がスイッチだったように、いきなりこぼれ落ちた涙が真樹子を狼狽させた。


──なんで?

なんで泣くの?


犬を見つけた時、迷惑としか思わなかった。
あの女の子達を見なければ、他の車と同じように見て見ぬふりで通り過ぎていた。
今の今まで、なんの同情もしてなかった

なのに…


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