冬の日の犬のお話
真樹子は泣きじゃくった。

老いた犬はきっかけに過ぎず、私はただただ自分の感情をぶちまける機会を欲していたのだ…

そうとわかっていたが、涙は止まらなかった。


老いた犬は、目やにで塞がりかかった目で真樹子を見ていた。

怒りもせず怯えもせず

顔に触れると、その手をなめようとして、懸命に頭を持ち上げた。

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