冬の日の犬のお話
背中に置いた手にかすかな痙攣を感じ、真樹子は目を閉じた。

痙攣は徐々に大きくなり、老犬の喉から乾いた吐息を絞り出し…



やがて静止した。



目を閉じたまま動けずにいる真樹子の頭に、獣医は大きなタオルを被せた。
今日は泣くなとは言わないつもりらしい。


先生…


うん?


これ、なんか臭い…


気にすんな。



真樹子は笑った。
泣きながら笑った。
へんな匂いのするタオルをかぶったまま、何度も何度も鼻水をすすりあげた。


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