冬の日の犬のお話
そうだ、そうしろ。


獣医も言った。


コイツのことは明日、俺が手配してやるから心配すんな。


さすがに真樹子は戸惑った。


そんな…ご迷惑…


しょうがねえだろ!


語尾は獣医にかき消された。


出会っちまったんだからな、俺等は。
だろ?


無愛想な男のぶっきらぼうな一言は、手のひらに舞い降りたひとひらの雪のように、真樹子の胸に溶けていった。


窓の外には、すべてを包みこむように、風のない大気が雪のカーテンを下ろしていた。




    【完】


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