冬の日の犬のお話
 
しづ もし わしが
かえってこれなんだら
やすけと めおとになって たっしゃでくらせ
あいつは いいやつじゃ


落人狩りに追われながら、そんな文を書くひまなぞあるまい。
西軍の負けいくさを悟った時に、したためておいたのじゃろう。

我が身の最期を知った時、竹蔵は逃げた弥助を恨みもせず、その無事を願ったのじゃ。
添いとげること叶わなんだ、しづの行く末を案じながらの…

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