冬の日の犬のお話
だが、そんな真樹子の都合とは裏腹に、車は遅々として進まない。
20分ほどもノロノロ進行した後、真樹子はその原因を知った。


──犬…


ボロ雑巾のような汚い犬が、真樹子の車線を塞ぐようにへたり込んでいる。
おそらくは車に当てられて、足腰が利かなくなったのだろう。
当てた車は逃げ去って、犬は道路に座ったまま。
おかげで後続車は、対向車線の車の切れ間を待って、犬を迂回して前進しているのだ。
これじゃあ混まないわけがない。

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