冬の日の犬のお話
尚も待たされ、不注意な運転手と不用心な犬の両方に腹を立てながら、ようやく犬を交わして進もうとした真樹子の目に、赤いランドセルを背負った二人の女の子が映った。

心配そうに犬の方を見ている。
あの子らの犬だろうか?
誰ひとり助けようとせず、無情に通り過ぎる大人達を見ているのか?

そう考えた時、真樹子の手は勝手に左ウインカーを出していた。

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