冬の日の犬のお話
10mほど先の、小さなスーパーの店先。
真樹子はそこに停車して、入口の脇に無造作に積んであったダンボール箱をつかんだ。

立ち往生している車の前に走り出て、犬を持ち上げてダンボール箱に入れる。
犬は痛がりも嫌がりもせず、真樹子の為すがままだった。


通り過ぎる車が、ジロジロと物珍しげな視線を寄越す。


もしも今、誰か見知った人が通り過ぎたら、きっと私が犬をはねたと思い込むに違いない…


真樹子はそう思って憂鬱になったが、もう遅かった。


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