HAPPYBIRTHDAY-主役のいない誕生日-
「昨日はあの子の誕生日だったんでしょ? それならそんな風に祝ってもらうんじゃなくてお墓参りに来てくれた方がよっぽど嬉しいわ!」

おばちゃんは俺に叱るようにして話し続ける。

それに、おばちゃんの言っていることは全部正しい。

僕だって1度は考えた事だ。

だけど僕は……

「違うんです。違うんだ。これはアイツがどうのこうのじゃなくて。僕がただ……。僕がそうしたかったんだ!! 死なせて。僕は此処に居たくないんだ。なんで、死なせてくれなかったんだよ……」


狂ったかのように嘆く僕の頭をポンッと、叩きながらおばちゃんは言う。


「頑張ったんだね。辛かったんでしょ。周りから同情の声をかけられるのも、自分だけがここに留まっているという、事実も」

今まで、1人で生きて来たんだろう?よく頑張った。
最後に言ったその言葉はもう僕の耳に届いていなくて。


どうしてだろうか?
どうも自分の母親くらいの年代の人にそう言ってもらえると、すごく落ち着く。

何十年と子育てをしてきたその手や、子供を何度叱ったことか分からないその口調。

「頑張ったんだね」その言葉が、酷く心に響いた。



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