金魚姫
二人のお気に入りの散歩コースは商店街を抜けて、蛙の合唱が賑やかなあぜみちを通り、近くの小学校まで行くコースだ。


小学校は全校生徒100人足らずの、小さな木造の建物だ。


体育館からはボールの跳ねる音やシューズの摩擦、甲高い掛け声がごちゃまぜになって聞こえてくる。


学校の向い側にはポツンと自販機がたたずんでいる。

ヨータとムサシは決まってここでコーラの500ml缶を買って分け合って飲みながら休憩するのだ。


さびたフェンスの向うには、夕日に照らされた鉄棒が長く影を伸ばしている。


かつては自分も通っていたこの学校。

休み時間中、駆け回っていた校庭も、あの頃より小さくなった気がする。


さっきまでの夕立で水を含んだ校庭から夏の匂いがする。
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