金魚姫
一瞬、小学生時代に吸い込まれるような気がしてヨータは残りのコーラを一気に流し込んだ。


引き返そうとリードを握る手に力をこめると、ムサシは片耳だけピクンと動かして足を踏張っていた。


「まだかえらないの?
もうくらくなっちゃうよ」

なだめる様に声を掛けたがムサシはびくともしない。

いつもならここで休憩した後、来た道を引き返すのがお約束なのだが‥‥


「まいったなぁ‥
 どこまで行く気?」

観念したヨータがリードを引く力を緩めると、今来た道とは反対方向にムサシは歩きだした。


ぐるりとフェンスに囲まれた学校沿いに歩き、体育館の裏までヨータをひっぱって行き、ぴたりと足を止めた。

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